nynuts

にゅーよーく・なっつ。

日本で将来が楽しみな本に出会いました

*このコラムは2013年9月に書いたものなんですが、未だに『科学漫画 サバイバルシリーズ』、大人気みたいです。

 

 この夏、日本に帰ったとき、実家がある町の小学校や図書館を回って「いま小学3、4年生の男の子が読んでる本って何ですか?」って聞いたんですね。

 うちの9歳児(男子)は日本の学年で小学3年生。アメリカでよく読まれてる英語本ならすぐわかるんですけど、日本で何が人気かはなかなかわからない。そこで現場の皆さんに聞いてみようと思ったんです。

 そこで紹介されたのがこの『科学漫画 サバイバルシリーズ』。いま日本の小学生たちにすごく読まれてるらしくて、同シリーズですでに30数冊出てると。

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 カテゴリー的には「学習漫画」になるこのシリーズ。日本語が第二言語であるうちの9歳児にとっても大変ありがたいんです。日本語の文字だけで埋まってるような本は面倒臭がってもう読まないんですね。絵がないとダメ。

 「ナイスな本、紹介してもらってラッキー」と思って1冊手にしてみたら、なんとこの本、もともと韓国で出版された学習漫画だったんです。だから日本で出てるのはその和訳版。思わず「すげえ~」ってひとりごと言っちゃいました。

 海外の本が翻訳されて日本で出版されること自体は、別に珍しいことじゃないですよね。私がビックリしたのは、日本の学習漫画と瓜二つのものが韓国で出版され、日本で和訳版として出回ってることでした。

 「とうとうこの時代が来たか」

 マジでそう思いました。そしてすっごく嬉しかったんですね。

 話がちょっとズレるんですが、『となりのトトロ』や『もののけ姫』などのスタジオジブリの映画を観てて、最後のクレジットにおそらく韓国系と思われる名前がずらーーーと並んでるようになったのは、いつ頃からでしょうか。

 スクリーンに流れ続けるそれらの名前を見ながら、私は「こうやって日本のアニメの技術が海外に流出するのよねえ」と同時に「もしかしたら将来、海外から第二の宮崎駿が生まれるかも」とも思いました。

 というか、日本のアニメや漫画はかなり前から海外で出回ってるわけじゃないですか。それらの影響を受けた作り手が海外で生まれてもまったくおかしくない。見た目は日本風なんだけど、視点や切り口、文化的バックグラウンドが日本のものとは違う、という作品がどんどん生まれて来る可能性も十分あるというか、実際そうなってますよね。

 ただ学習漫画まで出てくるとは思いませんでした。そしてそれが日本に逆輸入されるとは。油断しましたね。

 こうなると、同じようなことが韓国だけでなく、他の国発で起こることも考えられます。たとえば中国発の学習漫画、あるいはタイ発とか。フォーマットはあくまでも日本の学習漫画風だけど、視点や切り口、バックグラウンドが違う作品群。なんかすばらしくないですか。

 私がエクセレントだと思うのは、別に日本のアニメや漫画の技術が海外に浸透してきてるというデカい話じゃなく、小学3年生男子の親として、本の消費者としてなんです。

 日本語が第二言語であるうちの9歳児にとって、日本の学習漫画はなくてはならない日本語教材です。親としてはできるだけ選択肢が多いほうがいい。

 さらに日本の学習漫画で気になるのは、キャラクター頼りの作品が目立つことです。「ドラえもん」とか「ちびまる子ちゃん」とか。「とりあえず人気キャラクターをベースに学習漫画作ればいいか」とは言いませんが、ストーリーのおもしろさで押すというより、キャラクターで売ってる本が多くないでしょうか。

 親としてはやっぱり、内容がおもしろい本がいいんですよね。

 その点、海外発の日本風学習漫画は、日本の人気キャラクターには頼れません。やはり軸足はストーリーのおもしろさになる。同時に日本のものとフォーマットはすごく似てるんだけど、内容的にはそれぞれのお国柄が出ると。

 ありがたいわ~。なんか楽しみになってきました。

 学習漫画は、日本が海外に誇るべきフォーマットです。世界中で日本風の学習漫画が生まれ、それが日本語でもバンバン出版される。結果としてうちの9歳児が喜んで日本語の本を読むわけです。最後の着地点が非常に個人的で申し訳ないのですが。

 とりあえず『科学漫画 サバイバルシリーズ』に関しては、出版した朝日新聞出版がエラいですね。パチパチパチ。今後もGJよろしくお願いします。

 

*2013年9月21日