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にゅーよーく・なっつ。

めいろまさんのクールジャパン論に私の考えをぶつけてみる

 さて、今回のお題はクールジャパン論。そう、最近日本政府がやってる、日本のコンテンツを売ったり紹介したりの政策ですね。

 そのクールジャパンについて、イギリス在住のめいろまさんがWirelessWire Newsサイトに【クールジャパンは誰がターゲットなのか】というタイトルの文を書いてます。

 

━━━めいろまさんのポイント

 詳細はリンクを読んでいただくとして、ポイントは:

・海外には日本の<職人や板前の技巧、繊細なサービス、伝統和食、着物、神社仏閣の静寂>などの<アップマーケット(裕福な人々向けの文化)の文化>を愛する富裕層が存在する

・彼らは<ドンキ、プリン頭のヤンキー、AKB48、巨乳ロリアイドル、18禁の同人、温水式便所、牛丼屋、プリキュア、初音ミクさん、味付けの濃いジャンクな日本料理、コンビニで売っている変な物>などの<ダウンマーケット(大衆向けの文化)>を愛する人々ではない

・よって、たとえば外国人の訪日観光において、できるだけ多くのお金を日本に落としてもらおうとするならば、メインターゲットとすべきなのは日本の<アップマーケット文化を愛する>外国人富裕層である

 ここまではよろしいでしょうか。

 日本のアップマーケットを愛する外国人富裕層をターゲットにすることに関しては、私も異論ないです。ただその具体案を考えたときに心配な点があります。つまり「どうやって彼らを日本に連れてくるか」という点。

 

━━━私の心配な点

 訪日観光業界の方々はよくおわかりかと思うのですが、この「外国人富裕層」を日本に連れてきて、お金を使うだけ使っていただくというのは同業界の永遠の課題なんですね。だからかなり前から業界関係者はトライしてます。いろんな人たちがいろんなアプローチをしてるはず。

 たとえばTwitter上でのやり取りの中で私がツイートしたのが:

 

 

 それに対する高須クリニック院長の高須 克弥先生のツイート:

 

 

 この高須先生のツイート読んだとき、「私みたいな貧乏人に外国人金持ちの嗜好なんてなかなかわかんないし、海外に住んでると日本国内の何が売りなのかもイマイチ見えないよね。もしかして、日本の人たちも日本のお宝にまだ気づいてなかったりして」と思ったんですね。

 

━━━うまく行ってない理由

 あと、前述の私の叔父が言ってたんですが、海外の金持ちと日本の観光資源を繋げて、ひとつのビジネスに組み上げられる人材が日本にあんまりいないらしいんです。

 日本の観光資源について詳しい人はいますよ。問題は海外。外国人金持ちたちへのコネクションを持っている、あるいはどうアプローチすればいいかを知ってる人が少ない。

 もちろん海外の金持ち向け旅行代理店を使うという手もあります。でもそこで必要になるのは営業力。日本への<アップマーケット文化>旅行がいかに商品価値のあるものなのかを説明して、代理店側を説得しないといけませんからね。

 大枠の話、つまり日本のアップマーケットを愛する外国人富裕層をターゲットにするという点については、みんな賛成だと思うし、日本の旅行業界はかなり前から狙ってるはずです。ただ問題は、具体的に詰めていく際に直面するいくつかのハードル。

 外国人金持ちにどうアプローチするのか。

 彼らにとってどういう旅行商品が魅力的なのか。

 そしてそれを誰がどうやって組み上げるのか。

 めいろまさんの意見に関しては、「外国人富裕層」を狙うのは大賛成。でも最大の問題は「どうやって?」ですね。

 

━━━日本のダウンマーケットを愛する人たち

 あと、めいろまさんが書いてた<ドンキ、プリン頭のヤンキー、AKB48、巨乳ロリアイドル、18禁の同人、温水式便所、牛丼屋、プリキュア、初音ミクさん、味付けの濃いジャンクな日本料理、コンビニで売っている変な物>などの<ダウンマーケット(大衆向けの文化)>の件ですが、日本のそういう文化や、日本のマンガ・アニメを愛してる外国人っているでしょ。私は「外国人富裕層」と同時に、彼らは日本にとってすごく大事だと思うんですね。

 確かに、めいろまさんが書いてたように、「外国人富裕層」に比べると彼らはお金になりません。まだ金持ってない若い層だからね。

 でも将来への投資としてはかなり価値があると思う。「将来の大事なお客さま」ってこと。

 ここで少し話がズレます。

 

━━━NYタイムズがやったこと

 今から10数年前の話なんですけど、その頃NYマンハッタンの道端にはよくNYタイムズの販売機が置かれてたんですね。ちなみにこんなヤツ。

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 普通は青い販売機なんだけど、チャイナタウンに行ったらNYタイムズの赤い販売機が置いてあったんです。マンハッタンの他の場所は「青」で、チャイナタウンだけ「赤」。

 いろいろ調べてみたら、チャイニーズ文化で「青」は不吉だということで、NYタイムズもチャイナタウンだけ販売機は「赤」にしたってことがわかったんですね。

 でも私は考えたんです。「そこまでしてチャイナタウンで売る価値あるか?」と。

 だってチャイナタウンなんて、NYタイムズ買って読むような人ってあんまりいないわけでしょ。チャイニーズばっかだし。でもなぜかNYタイムズはそこまで気合い入れてチャイナタウンで売ろうとしている。

 

━━━なぜわざわざチャイナタウン?

 その頃、仕事関係のコネがあったんで、NYタイムズのマーケティング担当の副社長にそのことを聞きに行ったんです。要するに「なんでそこまでしてチャイナタウンで売りたいわけ?」。

 その副社長(女性)が言うには「あれは将来への投資」だと。

 チャイナタウンで働いてる人や住んでる人がNYタイムズを読みそうなタイプでないことは、当然同社はわかってたんですね。ターゲットはチャイナタウンの道端を行き来する大人たちではなく、彼らの子供たちだったんです。

 「教育熱心なチャイニーズは、子供たちのためにNYタイムズを買うだろう。そして子供たちは同紙を読んで大きくなり、将来の読者になる」

 つまり20年、30年先の投資だったんですね。

 「あ~、そういう商売のやり方もあるんだなあ」

 私はそう思いました。

 ここで話を戻します。

 

━━━将来への投資として

 めいろまさんが言うところの、日本の<ダウンマーケット>が好きな若い外国人ってかなりいますよね。日本のアニメ・マンガ・特撮モノも含めたら、下は幼児ぐらいから存在するでしょ。

 彼らは、彼らの親の世代とはかなり違います。たとえば、アメリカ人の高校生がランチに巻き寿司食ってるのを何回か見たことあるんですが、それって彼らの親の世代では考えられなかったことですよね。

 小さい頃から日本のアニメ・マンガなどのコンテンツに触れ、スナックに枝豆食って、寿司も大好き、みたいな。

 確かに彼らは、今は金にはならないかもしれない。でも将来、彼らがお金を本格的に持ち始めたとき、日本人にとってトンでもないマーケットに化けるんじゃないかと思うんですね。今まで私たちが見たことないような。

 日本の皆さんには申し訳ないと思うんですよ。だってクールジャパン政策に使ってるのって、日本国民の血税ですよね。それを「でも将来、日本人にとってトンでもないマーケットに化けるんじゃないかと思うんですね」みたいな、確証もない軽いノリで投資しろって言ってるわけですから。

 ただ私はホントに将来、芽が出ると思ってるんです。今のうちから土を耕して、種を撒いて、水をあげてれば、いつか収穫できる日が来ると。

 なので私は、日本の<ダウンマーケット>を愛する層にも、しっかりクールジャパンのシャワーを浴びさせておく必要があると思います。

 以上です。