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にゅーよーく・なっつ。

海外で漢字を学ぶ子供たちのために

<Twitterコラム>

◇うちは、今9歳の上の子が生まれる前から「子供には日本語も教える」って決めてたんですね。その頃から海外での日本語教育に関して調べ始めたんですけど、私が知りたかったのは「日本語を学ぶ子供たちはどこでつまづくのか」だったんです。「成功」じゃなくて「失敗しない」学習法が知りたくて。

◇私は約10年以上前から海外での日本語教育について、専門家から先輩ママまで、ホントいろんな人たちに聞いて回ったんですけど、結局最大の問題はやっぱり「漢字」だったんですね。漢字でつまずくと。で、みんながやってる漢字学習法を調べたら、「書いて覚える」という日本と同じやり方だったんです。

◇たとえばアメリカに住んでる子供たちは、日常の生活の中で漢字を目にすることなんかほとんどないわけですよ。そんな環境で、日本と同じ漢字学習法が使えるわけがない。そう思って私は別の方法がないかいろいろ調べたんです。だって、自分の子供がコケるのを指をくわえて待つわけにはいかないからね。

◇「海外に住む子供たちに合った漢字学習法ってないのかしら」と探し回った結果、出会ったのが、今は亡き漢字学者、白川静さんの理論でした。「これしかない」って思ったんですね。漢字を何十回も書いて覚えるという力技じゃなくて、部首などの成り立ちを知ることによって理解していく方法です。

◇白川静さんの漢字学に出会って、「海外の子供たちにはこれしかない」と思ったのが10年近く前。だったらもっと早く言えよ、って話なんですが、ただその時はまだ「仮説」状態で、「実証」はできてなかったんですね。そこで私はこの10年、自分の上の子で実験しましたよ。白川漢字学が効くかどうかを。

◇この10年、私は白川静さんの漢字学を研究し、それをベースにした方法でうちの上の子に漢字を教えてきました。そしてとうとうその結果をご報告できるところまで来ましたよ。10年、長かったわ。で、結果なんですが、効くのよ、これが。何回も書いて覚える方法なんかより、ずーーーっと効率いいのよ。

◇「子供たちが漢字を学んだ後にその記憶をどうやって維持するか」なんですが、日本は「環境」というサポートシステムがあるじゃないですか。漢字で囲まれてるという「環境」ですね。でも海外で漢字を学んでる子供たちにはそんな「環境」はなくて、結局「自分の頭」しかないんですね。

◇海外に住む子供たちが、自分の頭に入れた漢字を維持する方法ですが、日本のように漢字環境に頼る方法は使えないわけです。となると、自分の頭の中にいかに定着させるかがポイントになります。その際、「単なる情報の断片」よりも「ストーリー」のほうが残りやすいんですね。昔話を覚えてるみたいに。

◇「海外で漢字を学ぶ子供たちには白川漢字学的なアプローチが有効」って話ですが、海外のいくつかの日本語学校や補習校はすでにカリキュラムに取り入れ始めてるんですね。たとえばNYのブルックリン日本語学園とか。変化の芽が出始めてる。でもまだ大きな流れにはなってないんです。

◇私としては、これまでの「漢字を書いて覚える」という日本式漢字学習法だけじゃなくて、白川漢字学をベースにした方法も、海外の子供たちの漢字習得の選択肢にできるだけ早く加えたいんですね。私が日本語教育業界をウロウロしてる間にそれが実現すればいいなあ、と。後の世代への置き土産として。


*2014年4月18日
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